タカアキ先生!チャオ〜!今日は晴れた天気で気持ちが良いですね。
チャオ!ぬまるくん。本当にね!ミツバチも元気に飛び回っているんじゃないかな。
前回、元気なミツバチは美味しいはちみつに欠かせない、と教えてもらったのを思い出します!
覚えていてくれて嬉しいよ。今日はそんな話をするにはぴったりの日だね。早速始めようか。
よろしくお願いします!
ずっと気になっていたんですけど、そもそも養蜂場のミツバチは「飼う」って表現で正しいんでしょうか?自然のミツバチではないですよね。
そうだね、養蜂家のことを「蜂飼い」とも呼ぶように、僕たちは巣箱を置いて、そこでミツバチを飼っているんだよ。牛飼いや羊飼いをイメージしてみると分かりやすいかな。
なるほど!自由に飛び回っていても、ちゃんと“所属”があるんですね!
さすがに一匹ずつ把握するのは無理だけどね(笑)養蜂は畜産業の一つに分類されていて、ミツバチを飼育する時には、巣箱を置く場所とその群数を家畜衛生保健所に届け出る義務があるんだ。
へぇ〜!それは知りませんでした。養蜂家ってはちみつを採ることが仕事のようですけど、ミツバチを育てるところから始まっているんですね。
そうそう。あたりまえのことなんだけど、意外と知られていないかもしれないね。
タカアキ先生の養蜂場は80年以上の歴史があるんですよね。今活躍しているミツバチは、最初に飼い始めたミツバチの子孫なんですか?
厳密に証明できるかと言ったら難しいけれど、ずっと繋がっている子孫はいるはずだよ。
というのは、たとえ大事に育てていても、病気や天候、天災などどうにもできない大きな環境の変化で個体数が激減してしまったこともあったらしいんだ。だから時には、異なる遺伝子を持つ個体と意図的に交配してミツバチの多様性を強化したりしながら今日まで養蜂を続けてきているんだよ。
なるほど〜。なんだか老舗の焼き鳥屋の秘伝のタレみたいですね!途中で壺をひっくり返しちゃうようなハプニングがあったとしても、営みとして続けてきたことには変わりないというか…。
ははは、たしかにそうかもしれないね!遺伝子の繋がりもそうだけど、僕たちが丹精を込めて育て続けてきたことはぜひ知ってもらいたいな。
大切に育てていると、我が子を見るような気持ちになりそうですね。
自慢の我が子だよ!大切にするから可愛いし、可愛いから大切に育てるんだ。
僕たちの養蜂場では、はちみつを採る作業に時間をかけて、なるべく一匹も潰してしまわないようにしているんだよ。
ミツバチもそれぞれの命を生きていますもんね。小さくて数が多いからといって、雑に考えちゃだめですね。
そうだね。でも、実は仕事の効率を図る上でも意味があるんだよ。例えば、巣枠を動かす時に手を滑らせてしまうと、ミツバチは攻撃されたと思って刺してくるんだ。指先を刺されると痛くて熱くて、とてもじゃないけど作業にならない。それは最大の損失だから、丁寧にすることは仕事の上でも大事ってこと。
なるほど〜!
ちなみに、不思議なんだけど、ミツバチはだんだん飼い主と波長があってくるんだ。僕が飼っているミツバチは僕に似て、イタリア〜ン!だよ!
えっ……?
もちろん冗談だよ(笑)でも、飼い主の波長と合うというのは本当。丁寧に扱っているから、うちのミツバチはみんな大人しいよ。
急にびっくりしちゃいましたよ〜!たしかに、すごく不思議だけど、ミツバチも生き物だから納得できる気もします。
うちのミツバチがイタリアンっていうも、ある意味嘘じゃないけどね。
僕らの先代たちが養蜂を始めた頃から飼われていたのは、セイヨウミツバチ種の中のイタリアンという亜種なんだ。人間が扱うミツバチの中で最もおとなしい性格の一つだと考えられていて、ヨーロッパから世界中に広がっていったと言われているよ。
えーー!それで、今はイタリア帰りのタカアキ先生が蜂場主かぁ。インクレディービレ(信じられない)!
さて、ぬまるくん。僕たちの養蜂場のミツバチのことを知ってもらったところで、クエスチョン。我が社の社是を知ってるかな?
はい、もちろん!「ミツバチの健康は私たちの健康」ですよね!
ベニッシモ!素晴らしい〜!では、その意味を話していこうと思うんだけど、そもそも“健康”なミツバチというのは、どういう状態のことだと思う?
えーっと、ストレスなく飛び回っているとか、長生きするとかですかね。あらためて考えてみるとよく分からないな…。
ふむふむ。たしかに、それは一つの正解。でも養蜂家は、各個体だけじゃなく、コロニー(群)としても健康で元気な状態を目指しているんだよ。
元気なコロニー、ですか。それで言うと、働きバチがたくさんいて、栄えている状態…かな。
お!ぬまるくんはやっぱり筋がいいなあ。まさに、コロニーの元気さは、ミツバチの数の多さや、健全な世代交代が行われているかというところにあるんだよ。 ミツバチの寿命は短くて、女王蜂は3年ほど生きるんだけど、働きバチは約1ヶ月(冬季は約6ヶ月)ほどしか生きられないんだ。だから、僕たちはミツバチの“健康”を、「個体」としてだけでなく、より長く「世代」に渡って見ているんだよ。
そうか、一匹一匹の元気さが、コロニーの元気さにも繋がっていくということですね! でも、どんなことに気をつけて育てているんですか?言葉にするのは簡単ですけど、そう上手くできることじゃないですよね。
難しく考えることはないよ。人間も動物も虫も、同じ生き物として、思いやりを持って育てることだよ。例えば、餌になる花蜜や水を得やすい場所に巣箱を置いたり、巣箱を移動する時にはストレスをかけないように運んだりね。
それから、日差しが強い時は暑くなりすぎないように防いだり、ということもあるかな。
逆に、会津の冬は寒いから房総半島で越冬させるんだけど、そこでも除草剤や農薬にさらされないような場所を選んだり、薬剤に頼らない養蜂を目指しているよ。
さらっと言いますけど、僕からしたらすごく大変なことばかりですよ…!
毎日の仕事だからね(笑)うちの養蜂場は歴史が長いから、ミツバチにとって良い環境を経験的に知っているし、それがきちんと実現できる「場所や人とのつながりの積み重ね」があるということも大きいかもしれない。それに、美味しいはちみつに元気なミツバチが欠かせないとなれば、手を抜くことはできないよね。
その、健康なミツバチが美味しいはちみつに関係するというのは、感覚的には理解できるんですけど……なんというか、具体的にはどう変わってくるのかなって。
まあまあ、そう焦らないで。第1回で話した、ミツバチがはちみつを作る方法は覚えているかな?
はい!ミツバチは集めてきた花蜜をハニカム(八角形の巣の穴)の中に貯蔵して、水分を飛ばしていくんですよね。それで、ハニカムが一杯になったら蜜ろうでフタがされて保存されます。
その通り。花蜜を集めて、濃縮と熟成をしていくことで、美味しいはちみつができるんだよね。ここで重要なポイントは、ミツバチの役割は日齢によって変わっていくってこと。
ミツバチの仕事は、生まれてから死ぬまで、日によって違うということですか?
いかにも。働き蜂は、成虫になってから最初のうちは、巣のお掃除をしたり、幼虫のお世話をしたり、巣の中で蜜の水分を蒸発させたりするんだけど、だんだん日数が経ってくると巣の門番までするようになり、最後には花蜜を集めるためにようやく巣箱の外へ飛び立つようになるんだ。
1ヶ月の寿命のうちに日にちごとに役割が変わっていくなんて、ミツバチって本当に面白いですね。
そうだよね〜。そして、そういった「役割の循環」が常に健全に保たれていないと美味しい蜂蜜が出来上がってこないんだ。つまり、さまざまな日齢のミツバチがバランスよくいるということなんだけど、そのために必要なのは…?
あっ!健全な世代交代ですね!!
ビンゴ!つまり、たくさんのミツバチがいて、健全な世代交代ができている元気なコロニーでは、美味しいはちみつが作られるサイクルがきちんと機能しているってことなんだよ。
なるほど!繋がってきました!ミツバチの健康とはちみつの美味しさは、はちみつが作られる仕組みに深く関係しているんですね。ミツバチが元気でその数が多ければ多いほど、花蜜を集めるパワーもありそうです!
そういうこと!ただ、あまりにも数が増えると女王蜂が働きバチを連れて巣を出ていってしまうんだ。だから、巣の中の状態を日々きちんと把握して「巣分かれ」を防ぐことも、コロニーを元気な状態にしておくために大切な仕事なんだよ。この仕事は、うちの養蜂場のはちみつの特徴のひとつ、「純粋性」とも関係があるから、また次回ゆっくり話そう。
ミツバチを育てるのも、美味しいはちみつを採るのも、地道な積み重ねがあってこそなんですね。今回もすごく勉強になりました!そして、「ミツバチの健康は私たちの健康」という社是の意味も、またひとつ深く理解することが出来ました!
ミツバチが一生をかけて集めるはちみつを頂くからには、僕たちも手間を惜しまず、こつこつ仕事をしていかないとね!それじゃあ、また次回!
ぬまるさん、取材お疲れ様です!
いやー、今日もとっても勉強になりました!頭をフル回転させたからけっこう疲れちゃいました。
ホントにお疲れみたいですね。もう12時過ぎですけど昼食はまだですよね?
はい…もうお腹ペコペコで…!!
ではパパっと作っちゃいます!
いいんですか!?やったー!!
はちみつだれのスタミナ丼
■材料(1人分)
豚バラスライス 100g
ごはん 200g
サラダ油 大さじ1
<たれ>
すりおろしにんにく 小さじ1
酒 大さじ1
みりん 大さじ1
しょうゆ 大さじ1
はちみつ 大さじ1
卵黄(お好みで) 1個
■作り方
1.豚バラを一口大に切る。
2.フライパンを中火で熱し、サラダ油を入れる。
3.豚バラをほぐしながら入れ、両面焼く。
4.たれの材料を全て入れ、豚バラに絡める。
5.水気が減ってきたら、ごはんにのせて完成!お好みで卵黄を乗せる。
甘辛のタレでごはんがすすむ!はちみつって料理にも使えるんですね!
もちろんです♪甘味料の代わりにぜひはちみつを使ってみてくださいね。
卵黄を混ぜて食べるとスタミナたっぷりって感じです!
ビタミンB1を豊富に含んだ豚肉で夏バテ解消!はちみつのブドウ糖でエネルギーチャージも期待できますよ。