チャオ!タカアキ先生!あれ?今日は少しお疲れですか?
ぬまるくん、チャオ〜。おっと、大したことはないんだけど、採蜜の時期は何かと忙しいからね。顔に出てしまったかな。
そうでしたか。前回、タカアキ先生が手間を惜しまず、ミツバチを大切に育てていることを聞いたばかりなので、根を詰めすぎていないか心配です。
ありがとう、ぬまるくん。でも大丈夫!美味しいはちみつのためならなんてことないさ。でも、せっかくだから今回は、採蜜にまつわる仕事について話そうかな。
はい、ぜひお願いします!
さて、ぬまるくん。うちの養蜂場のはちみつの特徴を覚えているかな?
はい!会津の植生を生かした「単花蜜」ですよね。
その通り。会津は蜜源樹に恵まれた土地だから、樹木ごとのはちみつを集めているんだ。でも、樹木ごとのはちみつといっても、もちろん木から直接採れるわけじゃない。ミツバチたちに花の蜜を採り分けてもらわないといけないんだよね。
単花蜜を集めるにはいろいろな工夫が必要だし、より純粋なものを求めればその分、経験や手間を惜しまないことが大切になるんだよ。
なるほど。ミツバチが好きなように飛び回っていたら、花の蜜が混ざってしまいそうですよね。ミツバチに言い聞かせるわけにもいかないし……。どうやってコントロールしているんですか?
ふっふっふ。実はミツバチと話せる能力もあったりして。
もう!焦らさないで教えてくださいよ〜。
ごめんごめん(笑)僕たち養蜂家の知識や感覚が問われる部分だけに、一言では言えないんだ。順番に話していくね。まず大切なのは、ミツバチの巣箱をいつ、どこに置くかということ。ぬまるくんだったらどうするか、ちょっと考えてみて。
そうですね…。目当ての蜜を吹く樹木の花が多く咲く時期に、それらが多く生えている場所ですかね。
大正解!ミツバチは良い蜜源を見つけると仲間に知らせて、その蜜を取り尽くすまでみんなで通い続ける習性があんだ。だから、採りたいはちみつの蜜源樹がたくさんあって、それがしっかり咲く時期に巣箱を置くことで、他の花の蜜が混ざることを避けるんだよ。
へぇ?!ミツバチ同士でコミュニケーションを取っているんですね!賢いなあ。でも、そんなぴったりな場所を見つけるのも、花が咲く時期を見極めるのも、どちらも難しそうです。
そうだね、こればっかりは自分たちの目で確かめていくしかないからね。
ただ、巣箱を置く場所を毎年変えているってことでもないんだ。代々受け継いで、50年以上巣箱を置き続けている場所もあるんだよ。自然の状態は日々変化するから、常に新しい置き場所を探しながら仕事をしているけどね。
なるほど〜。ところで、巣箱を置いたら後は待っていればいいんですか?
そうだったら楽なんだけどね。毎日複数か所ずつ様子を見て回っているよ。
毎日ですか?!
そうだよ。現場で花や花粉の状態、巣箱のはちみつの集まり具合なんかを見て、一番良いタイミングで採蜜するんだ。早すぎると完熟したはちみつが採れないし、遅くなれば、次に咲き始めた花の蜜が混ざってしまうからね。
なるほど、自然の変化を敏感に感じ取る必要があるってことかぁ…。家でじっと待っているだけでは分からないですね。
それから、僕たちの養蜂場では、より純粋なはちみつを集めるために巣箱にある工夫をしているんだけど、それには日々巣箱を見て回ることが欠かせないんだよ。
巣箱の工夫ですか?
うん。養蜂では、ミツバチが増えてくると巣箱に継箱を重ねていくんだけど、その時に「隔王板」という格子状の板を使っているんだ。隔王板は、女王蜂がいる巣箱と継箱の間に入れて、働きバチだけが通れるようにするものなんだよ。
へえ〜。文字通り、女王を隔離するってことですね。どうしてそんなことをする必要があるんですか?
女王蜂が他の継箱に行けないようにすると、産卵する場所が1か所になるだろう? そうすると、産卵される巣箱以外は全部、はちみつだけが集まっていくんだ。採蜜する時に幼虫やサナギがはちみつに混ざることがないから、純度の高いはちみつになるんだよ。
なるほど。子育ての部屋と貯蔵の部屋を分けるってことですね!でも、その隔王板を使うことと、日々の見回りと、どう関係するんでしょうか。
隔王板を使って女王蜂が移動できなくなると、産卵スペースが日々狭くなっていくよね。そうすると、「巣分かれ」といって、女王蜂が働きバチを連れて巣を出ていってしまうんだ。
あっ!前回もそのお話がありましたね!
そうそう!巣分かれを防ぐには、巣箱の中をこまめに点検しないといけないんだ。 具体的には、「王台(おうだい)」という新しい女王蜂の部屋が作られている様子があったら、それを取り除くんだよ。
見落とさないように点検していくのはすごく大変そうですね。
そうだね。隔王板を使うと巣分かれのリスクも高くなるし、手間もかかるから、使うかどうかは養蜂家次第。それでも僕たちは、純粋なはちみつを追求するために、隔王板は欠かせないと考えているんだよ。
タカアキ先生、お話の中で何度か出てきた、“純粋”なはちみつについて、もっと詳しく教えてください!
もちろん!さっき、僕たちの養蜂場のはちみつの特徴は「会津の植生を生かした単花蜜」と説明したよね。でも、それははちみつの性格的な特徴。味の特徴は、こだわり抜いたはちみつの純粋性にあると考えているんだ。
なるほど。つまり、松本養蜂のはちみつの美味しさの秘訣ですね!
そういうこと!だから商品として販売するまでには、蜜を集める段階での工夫以外にも、純粋性を極めるためにさまざまな工程を踏んでいるんだよ。たとえば、採蜜の段階ではまず、巣枠の色をチェックするんだ。
色、ですか?
狙っている樹木のはちみつがきちんと集まっているかどうか、巣枠の色を見れば大体判断できるんだよ。花蜜の色には特徴があるからね。
たしかに、単花蜜はそれぞれ色が濃かったり薄かったり、個性がありますよね!
うん。その時点で明らかに違う蜜が混じっている巣枠はその時点で抜いてしまうんだ。それで、色がOKなら今度は1枚1枚、匂いや味を確認していくんだよ。
え〜!1枚ずつ?!
驚くのはまだ早いよ!僕たちは現場だけじゃなくて、巣枠を持ち帰ってからと、最終的に瓶詰めをする前、と何度もテイスティングをしているんだ。1日に200回以上テイスティングをすることもあるんだよ。
うわぁ。そんなに味見をしたら、僕なら混乱しちゃいそうです(笑)そもそも、それぞれのはちみつの味を正確に判断するのもすごい技術ですよね。
味覚に関しては経験の積み重ねだね。でも、実はこの味覚も年齢とともに衰えていくものだから、若い人を育てて引き継いでいくこともすごく大切。高齢化が進んでいるから、これは日本の養蜂全体の課題でもあるんだよ。このことはまた後日話そうね。
なるほど…。誰にでもできる仕事じゃないですもんね。
そうだね。でも、技術と同じくらい大切なのは、自分たちができることを地道に、愚直にやっていくことだよ。言葉にすると当たり前のことでも、実際に行動するのはむずかしいことってあるよね。
たとえば僕たちは、はちみつを採り終えた巣枠を巣箱に戻す時、綺麗にしてから戻すようにしているんだよ。そうすれば、巣枠に残った蜜が次に集められる蜜と混ざることがないからね。
それこそ手間を惜しまないってことですね!
うん。まあ、今日みたいに疲れが出ちゃう時もあるんだけど(笑)でも、そこまでやってはじめて、花ごとの味や色の違いを際立たせられるんだよ。
ちなみに、テイスティングで弾かれたはちみつはどうなるんですか?
場合によるけど、昨年(2023年)は結果的に「百花蜜」になったはちみつがすごく美味しくて、『プレミアム100』という名前をつけて販売したよ!
あっ!百花蜜の存在をすっかり忘れていました!
単花蜜も百花蜜も、それぞれの良さがあるからね。僕たちの養蜂場のはちみつを楽しみにしてくれる人には、混じり気がなく純粋なものを届けたいと思っているけど、自然は時に予想外の喜びをもたらしてくれるものさ。
いや〜、はちみつは本当に奥が深いですね。
ときに、ぬまるくん。ミツバチの巣の奥には、はちみつの他にも自然の神秘と恵みがいっぱいなんだよ。次回は、ローヤルゼリーやプロポリスの話をしようか。
これまた“特別なはちみつ”のお話ですね!ますますミツバチとはちみつの沼にはまってしまいそうです。また次回も楽しみにしています!
ぬまるさん、取材お疲れ様です。おやつはいかがですか?
ありがたくいただきたいところなんですが、この暑さで食欲がなくて…。
ではさっぱりしたはちみつレモンゼリーはいかがですか?冷蔵庫でしっかり冷えてますよ♪
冷たいゼリー?それなら食べたいかも…!
では用意しますね!少しお待ちください。
はちみつレモンゼリー
■材料(カップ2個分)
レモン果汁 大さじ2
はちみつ 大さじ3
水 250ml
ゼラチン粉末 5g
水(ゼラチンをふやかす用) 大さじ2
レモン(いちょう切り) 2枚
■作り方
1.ゼラチン粉末を水大さじ2の水で10分ほどふやかす。
2.鍋に水、砂糖、はちみつを入れ、沸騰しない程度に弱火で加熱し、火を止める。
3.粗熱がとれたら、1を入れて溶かす。さらにレモン果汁も加えて混ぜる。
4.カップに流し込み、いちょう切りにしたレモンを浮かべる。
5.冷蔵庫で4〜5時間冷やし固める。
さっぱりして美味しい!暑い夏にぴったりですね!
食欲なくてもつるんと食べられちゃいますよね。私も一緒にいただきます♪
子ども大人もおいしいゼリーですね。うちでも作ってみたいな。
簡単に作れるのでぜひ作ってみてくださいね!