タカアキ先生、チャオ!
チャオ!ぬまるくん。今日は一段と真剣な顔をしているね。
わかりますか?
実は前回、「ミツバチは何千年も人間と共存してきた」というお話を聞いてから、ミツバチやはちみつがより身近に感じられるようになったんです。でも、最近は人間の営みによって数が減っていると聞いて、心配で。
そうだね。第3回で少し触れたように、たしかに1990年代以降、ヨーロッパやアメリカを中心にミツバチが激減していて、日本でも同じように数が減っているね。
ミツバチが減っていくと、養蜂の仕事にも大きな支障がでてきますよね。
はちみつが食べられなくなってしまう未来もあるんでしょうか。
うーん。少なくとも僕は、そうならないように養蜂を続けていきたいけどね!
美味しいはちみつを、未来の子どもたちにも食べさせてあげたいなあ。僕にも何かできることはありませんか?
たくさんあると思うよ!そのためにはまず、養蜂の現状と課題を知ってもらうことにしようか。
はい!よろしくお願いします!
じゃあ、まずはクエスチョン。世界中で飼われているミツバチの数は50年前と比べてどのくらい減っていると思う?
うーん。難しいな。3割くらいでしょうか。
ははは。正解は、減っていない、です。
ええー!さっきミツバチが激減しているって話をしたばかりじゃないですか!
いったいどういうことなんですか?
ごめんごめん。ちょっと意地悪だったね。
正確には、ミツバチがすごく減っている地域もあれば、増えている地域もあるってこと。
たとえば、アジアやアフリカなどの国では、経済成長に伴って産業が活性化したことで、ミツバチの絶対数は増えているんだよ。だから、世界全体のミツバチの数でいうと、増加傾向ですらあるんだ。
うーん、なるほど。でも、だから安心ってことじゃないですよね?
もちろん。ちょっとここは正確にと思ってね(笑)
そうですよね、勉強になります。それじゃあ、あらためて。ミツバチが減っている地域では何が起こっているんですか?
うん、ここからが本題。
たとえば、欧米では1990年代の初めごろから「蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder, CCD)」といって、大量のミツバチが忽然と姿を消してしまう現象が起きているんだ。
あ!それは聞いたことがあります!アメリカでは2006年から2007年にかけて、ミツバチ全体の4分の1程度が急にいなくなってしまったんですよね。巣の周りで死んでいる様子もなかったとか…。
よく知っているね。そうなんだ、すごく不気味な出来事だよね。海外ではメディアでも広く取り上げられて、この件以降、ミツバチへの関心は高くなったと言えるかもしれないね。
なるほど。僕も、この印象が強かったので、世界中でミツバチが減っているイメージを持っていたのかもしれません。
うん。そういう人も多いんじゃないかな。日本でも同じような現象が起きて、実際に日本のミツバチも減っているからね。
CCDの原因は分かっているんですか?
それが、世界中で研究されているんだけど、結局答えは出ないままなんだ。
えっ。それじゃあ、養蜂家のみなさんも対策しようがないですね…。
そうだね。でも、CCDの発生以外にも、ミツバチが減ってしまう理由はいろいろあるんだよ。寄生虫や病気、農薬、蜜を取る蜜源の減少、気候変動といった問題が、複雑に絡み合っているんだ。
すごく規模が大きな問題ですね。ミツバチにとって、やっぱり今の地球は住みにくいということでしょうか。
残念だけど、そう言っても良いかもしれないね。だから、ミツバチの数が増えているとされる地域の養蜂家にとっても、決して他人事じゃないんだ。
タカアキ先生、世界のミツバチや養蜂家の方が置かれている状況が厳しいことは分かったんですが…具体的に想像できない部分も多くて。寄生虫や病気、農薬、蜜源の減少、気候変動のこと、もう少し詳しく教えてください!
そうだよね。それじゃあ、順番に解説していくね。まず、寄生虫と病気はなんとなく想像できるかな?
はい。ミツバチが弱っていく姿が目に浮かんでかわいそうです…。
本当にね。実は、僕たち養蜂家が日々一番気を使っているのは、この寄生虫や病気への対応なんだ。
ミツバチに寄生する「ミツバチヘギイタダニ」という寄生虫は、ミツバチの幼虫の体液を吸うことで繁殖するんだけど、これが厄介な虫でね。幼虫は途中で死んでしまうか、成虫になれても羽が縮れて飛ぶことができなくなってしまったりするんだ。多くの養蜂家がミツバチを守るために薬剤を使用して、それが当たり前のようになっているんだけれど、使い続けることが必ずしも良いとは限らないし、すごく難しいところだよ。
ミツバチを守るためとはいえ、人工的に作り出されたものは、自然や生き物に思いもよらない影響を与えることがありますよね。
そうだね。農薬の問題はまさにそれなんだよ。でも、農家さんも植物を害虫の被害から守るために農薬を使うのだから、そこの気持ちは一緒。
農家さんにとっても、大事に育てた植物は我が子同然ですもんね。
うん。だからこそ、農家は農薬を撒く場所や時期を養蜂家に共有したり、養蜂家は巣箱を設置する場所を工夫したりして、協力関係を築いているんだよ。上手くいくことばかりじゃないけどね。
そうだったんですね!以前、農家さんが育てる植物はミツバチにとって貴重な蜜源で、その植物にとってもミツバチは大切なポリネーター(花粉を運んで受粉させる生き物)だということを教えていただいたことを思い出しました。
素晴らしい!蜜源が足りていない中で、農家さんと協力することは養蜂家にとってすごく大事なことなんだよ。
それじゃあ、農家さんと協力していれば蜜源の問題は解決ってことでいいですか?
おっと。それはちょっと違うな。農家さんは減る一方ということもあるし、主な蜜源は養蜂場によっても違うからね。
たとえば、うちの養蜂場のミツバチが運んでくる花蜜はほとんどが自然の樹木のものなんだよ。でも、今は多くの土地が開発されて自然の蜜源はどんどん少なくなっているんだ。それから、蜜源は気候変動の問題とも関係してくるんだよ。
す、すみません!そう単純な話ではないですよね…。気候変動のことも教えてください!
もちろん。たとえば、最近は冬なのにすごく暖かかったり、いつまでも夏が続いたり、異常気象が起きているよね。
コートを着ていったのに、暑くて腕まくりしちゃうこともありますね(笑)
季節を間違えたかな?!ってなるよね。それって、植物も一緒でね。あんまり暖かいと、早すぎる時期に花を咲かせることがある。そうすると、本来ミツバチの数が一番増える時期に花が咲かずに、ミツバチは食事にありつけないということになってしまうんだよ。それから、花の時期に雨が続くのも良くないね。ミツバチは雨の中を飛べないから。
ええーー。気候変動って、思っていた以上に深刻な問題ですね…。
そうなんだよ。他にもあってね。
花蜜が枯渇する時期によく見られるんだけど、盗蜂といって、近くのミツバチの巣から蜜を盗むことがあるんだ。蜜を盗まれたミツバチの群れは弱っていって、根こそぎ略奪されると群ごと崩壊してしまったりするんだよ。
いろいろな問題が複雑に絡み合っていると言っていたのが、分かってきました。
ミツバチを育てるって大変だな…。
まあね〜。でも、その分、ミツバチが元気に飛び回って美味しいはちみつを作ってくれると、たまらない気持ちになるよ。こういう話を聞くと、ぬまるくんも、ミツバチやはちみつがより貴重で、ありがたいものに感じられると思わない?
そう思います!でも、結局僕がミツバチや養蜂家のみなさんのためにできることってあるのかなって。
ぬまるくんみたいに、ミツバチや養蜂のことを知ってくれる人が増えることは、僕たち養蜂家にとって、すごく心強い存在なんだよ!今起きている問題は、人間の日々の生活の積み重ねから生じていることだからね。
そういうものですかね…。自信はあんまりないですけど、みんなにこのお話を伝えていくことはできるかもしれません!
そうそう、その調子!
ところで、タカアキ先生。こんなに大変な仕事をどうして続けられるんですか?僕だったら、心が挫けてしまうかもしれません。
よくぞ聞いてくれました!今から話すと明日の朝になっちゃうかもしれないけど、いいかな?
ええっと、それじゃあ、また次回!!
彩子さん、見てください!友達からりんごをいっぱい貰ったんです!
わあ、おいしそう♪私、りんご大好きなんです!
ちょうどよかった!彩子さんにもおすそ分けしますね。
ありがとうございます!では、これからりんごのはちみつコンポート風を作るので、一緒に食べませんか?
りんごのはちみつコンポート風…?
コンポートは果物を砂糖水で煮たもの。今回は、水で煮てからはちみつを絡めるのでコンポート「風」なんです。ではさっそく作ってみましょう!
りんごのはちみつコンポート風
■材料
りんご 2個
塩水 適量
はちみつ 大さじ2程度
シナモンパウダー 適量
■作り方
1.りんごは8mm程度にカットし、塩水にさらす
2.水気を切ったら、塩気は洗い流さずそのまま鍋に入れて、蓋をして中火にかける
3.1分ほど経って蒸気が鍋についてきたら、蓋を開けてかきまぜる
4.焦げ付かないよう、1〜2分おきにかき混ぜる
5.10〜15分ほど火にかけ、水分が飛んでいることを確認し、火を止める
6.はちみつを2周(大さじ2程度)と、シナモンパウダー適量をかけてよく混ぜる
7.粗熱がとれたら瓶に移して完成
<応用レシピ>
「アップルパイ風バゲット」
1.薄くカットしたバゲットに、バターを適量のせ、はちみつをかける。その上からりんごのはちみつコンポートを重ねて、シナモンパウダーを振りかける
※動画ではバゲットの代わりにチャバッタを使用しています
2.トースターで3分程度焼き、焼き上がりに追いはちみつをして完成
「ヨーグルト」
1.ヨーグルトの上にりんごのはちみつコンポートとお好みでミントを乗せ、はちみつをかける
そのまま食べてもおいしいけど、パンにのせて追いはちみつをかけたら、ちょっとしたごちそうパンになりますね!
ヨーグルトにもぴったりですよ。ぜひおうちでも試してみてくださいね♪